30秒サマリー
背景には、2024年から始まった医師の時間外労働上限への移行と、看護職の不足が続く現場の疲弊がある。
厚労省は、業務削減・ICT効率化・特定行為研修・看護管理者支援を軸に働き方改革を後押ししている。
夜勤を担える職員の減少、多様な働き方の増加、タスクシフトの遅れ──そんな現場の薄明かりに触れるような施策だ。
結論として、2026年度改定に向けて “持続可能な勤務体制づくり”を制度側が本格的に支援し始めた と言える。
3分サマリー
背景
医師の時間外労働規制が2024年にスタートし、病院は業務整理と勤務体制の再構築を急ぐ段階にある。
看護側でも、時短勤務や夜勤免除の増加で夜勤体制が不安定になり、負担が特定の人に集中しやすい状況が続いている。
特定行為研修やICT導入は進んでいるものの、日常の負担軽減にはまだ距離が残る。
厚労省はこうした背景を踏まえ、「医療人材確保」「勤務環境改善」「業務効率化」を補正予算で支援する姿勢を示した。
前提として、働き方改革は“現場努力だけでは解決しきれない段階”に入り、制度的な後押しが必須となっている。
ポイント
- ICT機器による業務効率化(音声入力・自動反映・インカム等)
看護業務の効率化を目的にICT導入を補助。
バイタルの自動反映や音声記録は、夜勤の巡視・申し送りの負担を大きく減らす。
結論:業務削減の“即効性が高い領域”が制度的に支援されている。 - 「業務効率化推進委員会」による病院全体の業務見直し
業務改善の進捗管理を行う委員会の設置を支援し、効率化計画や職場環境改善を後押し。
部署横断で業務内容を見直しやすい環境が整う。
結論:現場任せではなく、組織単位で改善を進めるための土台がつくられた。 - 特定行為研修修了者と医師のタスクシフト強化(特に離島・へき地)
特定行為研修の受講体制の整備、修了者との協働支援が強化。
医師の判断を待たずに対応できる処置を拡大し、救急・外来の負担を軽減。
結論:専門性を持つ看護師の活用が“制度的に必須の戦略”へ移行。 - 勤務環境改善(夜勤体制の維持・多様な働き方支援)
夜勤を担う職員が減る中、多様な勤務形態の導入や相談体制整備を支援。
看護管理者向けの事例集・動画の整備も進む。
結論:偏りがちなシフト問題を構造的に改善する狙いが明確。 - ナースセンター活用による看護職の確保強化
全国のナースセンターが使う「求人・求職の情報システム(NCCS)」を改修し、求人票の統一や情報共有を改善。
ミスマッチを減らし、地域の採用力を底上げする仕組みへ。
結論:地域差の大きい“看護師確保”をシステム面で下支えする動き。
今後の見通し
働き方改革の焦点は、“どれだけ業務を減らし、どれだけ役割を再配置できるか” に移っていく。
ICTだけでなく、夜勤体制の再構築、特定行為研修の拡大、多様な働き方に応じた管理体制が必要となる。
2026年度診療報酬改定では、勤務環境改善や業務削減の実績が評価項目として取り上げられる可能性がある。
結論として、働き方改革は“現場の努力頼み”から“制度と組織が一体で進める改革”へと移り変わりつつある。
一次ソース
厚生労働省「令和7年度補正予算(案)概要(医療・医療人材関連)」
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/25hosei/dl/25hosei_20251128_01.pdf
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