30秒サマリー
背景と現在地
日本の医療費は年々膨張し、2024年度には過去最高の48兆円に達しました。国(財務省)は国民の保険料負担を抑えるため、医療費の削減を強く求めています。
ニュースの核心
財務省は、コロナ禍を経て経営が安定した一部の「診療所(開業医)」の報酬が高すぎると指摘し、引き下げを狙っています。これに対し、開業医が中心の「日本医師会」は、物価高騰などを理由に大幅なプラス改定(増額)を要求し、真っ向から対立しています。
結論
限られた医療費のパイを奪い合うこの構図では、政治力のある医師会(開業医)の要求が通れば、その分、病院(勤務医・ナース)への配分が減らされるリスクがあります。「医師の給料交渉」は、回り回って私たちの賃上げ原資を削る可能性が高いのです。
3分サマリー
医療費48兆円の衝撃:国は「削りたい」、医師会は「増やせ」
私たちの給料の源泉である「診療報酬」は、2年に1度見直されます。次回の改定は2026年です。 現在、日本の医療費は高齢化と高額医薬品の登場により膨れ上がり続けており、財務省は「現役世代の保険料負担は限界だ。医療費(報酬)全体を抑えたい」という強い危機感を持っています。
一方で、日本医師会は全く逆の主張を展開しています。 「物価高や光熱費の高騰、スタッフの賃上げ原資確保のため、病院経営は苦しい。例年にない大幅なプラス改定が必要だ」 この「財布の紐を締めたい財務省」と「予算を分捕りたい日本医師会」の綱引きが、改定前の恒例行事となっていますが、今回はインフレという要素が加わり、かつてない激戦の様相を呈しています。
「診療所 vs 病院」の構造的なジレンマ
今回の改定議論で最大の焦点となっているのは、同じ医師の中でも「開業医(診療所)」と「勤務医(病院)」の間に生じている収益構造の格差です。
財務省はデータに基づき、次のような指摘を行っています。 「コロナ禍の特例や補助金を経て、一部の診療所(開業医)は極めて高い利益率(経常利益率8.8%など)を叩き出している。ここを適正化(減額)すべきではないか」 つまり、儲かっている開業医の報酬単価を引き下げ、その浮いた分を救急や高度医療を担う病院へ回すべきだ、という論法です。
しかし、日本医師会の会員の多くは開業医によって構成されています。彼らは自分たちの収入減に直結するこの提案に猛反発し、自民党の有力議員(「厚労族」と呼ばれる政治家たち)に強力に働きかけています。 ここに、私たちナースが注視すべき「ゼロサムゲーム(パイの奪い合い)」のリスクがあります。 医療費全体の枠(改定率)には上限があります。もし医師会の政治圧力が勝ち、診療所の報酬が高止まりすれば、そのしわ寄せは必然的に「病院(特に中小病院)」の報酬据え置きや削減という形で現れる可能性が高くなります。 開業医の経営が守られる一方で、病院の利益が圧縮されれば、そこで働く勤務医やナースのボーナス原資は確実に削られます。
湿布も保湿剤も保険から消える?
さらに、財務省が医療費削減のターゲットとして挙げているのが、「OTC類似薬(市販薬で代用できる薬)」の保険適用除外です。 具体的には、花粉症の薬、湿布薬、保湿剤(ヒルドイドなど)、漢方薬などが対象として議論されています。これらを「医療保険の対象外(全額自己負担)」にして、浮いた財源を他に回そうという動きです。
- 財務省の言い分: 「ドラッグストアで買える薬まで保険で賄う余裕はない」
- 医師会の言い分: 「自己負担が増えれば受診控えが進み、病気の発見が遅れて重症化する(結果的に医療費が増える)」
医師会の反対には、「軽症患者の受診回数が減り、再診料などの収入が減る」ことを危惧する側面もあります。ここでも「患者のアクセス権」と「財政の持続性」が天秤にかけられています。
今後の見通し:2025年末の「改定率」攻防へ
2026年の改定は、単なる数字の調整ではありません。「開業医の既得権益」と「国の財政規律」の衝突であり、その余波が病院ナースの財布を直撃するリスクをはらんでいます。
ナースの賃上げ(ベースアップ評価料)は始まったばかりですが、その原資となる診療報酬本体が削られれば、制度自体が形骸化しかねません。 年末にかけて決定される「改定率(プラス何%か、マイナス何%か)」のニュースは、遠い政治の話ではなく、私たちの「来年の生活水準」を決める通達そのものなのです。
一次ソース
- Yahoo!ニュース(文春オンライン): 「医療費48兆円」過去最高を更新…財務省が指摘する“儲かりすぎている”開業医の実態と、さらなる増額を求める日本医師会の主張



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