30秒サマリー
背景と現在地 政府は「医療職の賃上げ」を掲げ、多くの病院で基本給(月給)のベースアップが始まっています。しかし一方で、「OTC類似薬(市販薬で代用できる薬)の保険適用外化」など、医療費を削る動きも加速しています。
ニュースの核心 「外来の薬の話でしょ?」と思わないでください。病院にとって「手軽な処方」は確実な収益源でした。これが断たれると病院の「利益」が減り、そのしわ寄せは、業績連動である「全職員のボーナス削減」という形で跳ね返ってきます。
結論 「基本給アップ」vs「ボーナスダウン」。短期的にはプラマイゼロに見えますが、勝者は間違いなく「基本給」です。なぜなら、基本給はあなたの残業代単価、病欠時の手当、そして数十年後の退職金までを底上げする「絶対的な資産」だからです。
3分サマリー
なぜ「OTC類似薬の除外」が、病棟ナースのボーナスを減らすのか
まずは、少し嫌な現実(お金の流れ)の話をします。 国は現在、「OTC類似薬」の保険外しを強力に進めています。具体的には、湿布、保湿剤(ヒルドイドなど)、花粉症薬、漢方薬などの「軽微な不調に対する薬」です。
これまで病院は、こうした薬を処方することで、比較的容易に収益(診察料+処方箋料など)を上げていました。しかし、国が「それは薬局で自費で買って」と蛇口を締めるとどうなるか。 病院の「確実だった売上」がごっそり消えます。
病院経営において、ナースの「月給(基本給)」は固定費として守られますが、「ボーナス」はあくまで「利益の分配」です。 外来部門の収益が落ちれば、病院全体の利益が減り、その調整弁として「今年の冬は全職員0.5ヶ月分カット」という決断が下されやすくなる。これが、湿布の話があなたのボーナスに直結するカラクリです。
「手取り」は同じでも、「価値」は劇的に違う
「じゃあ、賃上げされても結局トントンじゃないか」。 そう感じるのは当然です。しかし、ここで絶望するのは早計です。 「ボーナスでもらう10万円」と「基本給でもらう月1万円(年12万円)」は、金額が近くても、その価値は天と地ほど違うからです。
今回の賃上げ政策(ベースアップ評価料など)は、国が「基本給や毎月の手当」を上げることに特化して予算を投じています。 ボーナスは病院が赤字になれば消える「水物(みずもの)」ですが、一度上がった基本給は、労働契約法により守られ、**経営が悪化しても簡単には下げられない「既得権益」**になります。 不安定なボーナス頼みの給与体系から、毎月確実に守られる固定給中心へのシフト。これは、ナースの生活防衛にとって非常に大きな意味を持ちます。
基本給アップは「残業代」と「退職金」への投資
さらに、基本給アップには**「利息」**がつきます。
- 残業代の単価アップ 残業代は「基礎賃金(≒基本給)×1.25倍」等で計算されます。基本給が上がれば、同じ1時間の残業でも、あなたの労働単価は自動的に高くなります。夜勤手当の計算基礎に基本給が含まれる病院なら、夜勤1回の価値も上がります。
- 傷病手当金の増額 もしあなたが病気で休職することになった場合、健康保険から出る「傷病手当金」は標準報酬月額(毎月の給与)を基に計算されます。ボーナスはここに含まれません。基本給が高いことは、万が一の時の「保険」にもなるのです。
- 退職金のベースアップ 多くの病院で、退職金は「退職時の基本給 × 勤続年数 × 係数」で計算されます。 目先のボーナスが数万円減ったとしても、基本給が底上げされていれば、数年後、数十年後に受け取る退職金は数十万円、場合によっては百万円単位で増える可能性があります。
今回の医療費削減と賃上げのセットは、「目先の現金(ボーナス)」を削り、「将来の安定資産(基本給)」に振り替える手術のようなものです。 痛みはありますが、長く働き続けるナースにとっては、決して悪い話ではありません。
一次ソース
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
(厚生労働省:中央社会保険医療協議会 総会|医薬品の保険給付の在り方と医療経済実態)



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