【特定特定行為研修】10万人の目標と、私たちの現在地。|“待つ時間”を“ケア”に変えるための、少し長い切符

30秒サマリー

背景と現在地

医師の働き方改革に伴い、診療の補助範囲を拡大する「特定行為研修」が始まって数年。国は「2025年までに10万人」という壮大な目標を掲げていました。

ニュースの核心

しかし、実際の修了者はまだ目標の数分の一にとどまっています。制度の認知は進みましたが、「費用と時間の壁」や、資格を取って戻っても活かしきれない「現場の温度差」が、普及の足を重くしています。

結論

この資格はゴールではありません。チーム医療という名の「共通言語」を持ち、患者さんのために動ける時間を増やすための、ひとつの切符に過ぎません。

3分サマリー

背景:暗闇で「待つ」という不安

「医師が足りないから、ナースがやる」。特定行為研修は、そんな単純な穴埋めの図式で語られがちです。 しかし、その本質は**「待っている時間を、ケアする時間に変える」**ことにあります。 脱水で血管が出ない患者さんに点滴を入れる時、人工呼吸器の設定を変えたい時。医師のPHSが鳴り、折り返しを待つあの数十分間は、患者さんにとっては苦痛の時間であり、そばにいる私たちにとっては「何もできない」という無力感の時間でした。 そのタイムラグを解消し、私たちの手で治療のバトンを繋ぐ。そのためのライトとして期待された制度ですが、開始から数年が経ち、理想と現実の距離が少しずつ浮き彫りになっています。

ポイント:数字と現場の「乖離」

  • 1. 「10万人」への遠い道のり
    • 国は2025年に向けて「10万人」の養成を目指していましたが、実際の修了者はまだ1万人規模にとどまっています。
    • 数十万円〜百万円単位の受講費と、半年以上の学習期間。ただでさえ人手不足の病棟から、主力の看護師を研修に出す余裕がないという「物理的な重力」が、普及を阻んでいます。
  • 2. 「ペーパードライバー」ナースの悩み
    • 最大の問題は、苦労して資格を取って戻っても、自施設で活かせないケースが多発していることです。
    • 包括的指示を出すための手順書作成が遅れていたり、医師側に「自分でやった方が早い」「責任の所在が不安」という心理的ハードルがあったりするためです。
    • 結果、「特定行為の資格は持っていますが、結局毎回ドクターコールしています」という矛盾した状況が生まれています。
  • 3. 診療報酬上の「追い風」
    • 一方で、2024年度診療報酬改定では、風向きが変わりました。
    • 特定行為研修修了者の配置や実施に対する評価(特定行為業務従事者加算など)が拡充され、病院にとって「修了者がいること」自体が経営上のメリットになりつつあります。
    • これにより、「受講費を病院が全額負担する」「資格手当をつける」といった待遇改善の動きが、ようやく加速し始めています。

今後の見通し:0.1秒早く気づくために

制度は全ての区分を取る必要のない「パッケージ研修(領域別)」へと形を変え、より現場の実情に合わせて取りやすい方向へ進化しています。 目指すのは「特別なスーパーナース」ではなく、急変時に誰より冷静に動ける「病棟の頼れる先輩」です。 私たちが手に入れるのは、医療行為の許可証だけではありません。病態生理を深く学ぶことで得られる、患者さんの変化に0.1秒早く気づくための「視座」こそが、本当の武器になるはずです。

一次ソース

特定行為とは

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