30秒サマリー
背景と現在地
「ナイチンゲールの国」英国で、歴史的な事態が起きました。公的医療制度(NHS)で働く看護師たちが、生活できないほどのインフレと低賃金に抗議し、大規模なストライキを決行したのです。
ニュースの核心
彼らがプラカードを掲げた本当の理由は、単なる自分たちの給料アップだけではありませんでした。「低賃金でナースが辞めていくせいで、患者さんの命が守れない」。現場崩壊を食い止めるための、ギリギリの手段だったのです。
結論
「お金の話をするのは汚いこと」でしょうか?いいえ、適正な対価がなければ、医療の質も安全も維持できません。英国の事例は、使命感だけに頼る医療システムの限界と、声を上げることの重要性を私たちに突きつけています。
3分サマリー
「英雄」と呼ばれたナースが、フードバンクに並ぶ日
英国では近年、急激なインフレ(物価上昇)が市民生活を直撃しています。 しかし、NHS(国民保健サービス)で働く看護師の給与は、実質賃金ベースで10年以上も下がり続けていました。
コロナ禍では「英雄」と称賛され、拍手を送られたナースたち。 しかし、パンデミックが過ぎ去った後に残ったのは、暖房費を払えず、仕事帰りにフードバンク(食料配給)に並んで明日のパンを貰うという、信じがたい現実でした。 「拍手ではお腹はいっぱいにならない(Claps don’t pay the bills)」。 このスローガンは、精神論での搾取に対する痛烈なカウンターとして、世界中の医療者の共感を呼びました。
「患者を見捨てるのか」という批判への反論
ストライキに対し、英国政府や一部のメディアからは「職務放棄だ」「患者を危険に晒すのか」という批判も浴びせられました。 しかし、王立看護協会(RCN)の主張は一貫していました。
「私たちがストをするのは、今のままでは患者を守れないからだ」
- 負のループ: 低賃金でナースが大量離職する → 残ったスタッフが激務で疲弊する → 医療ミスが増え、患者死亡率が上がる。
- 主張: 賃金を上げて人員を確保することこそが、最大の「患者安全(Patient Safety)」である。
彼らは救急外来や集中治療室(ICU)などの命に関わる部署の機能は維持しつつ、「今のNHSはすでに崩壊している」という事実を社会に可視化するために立ち上がったのです。 これは、自分の生活を守るための切実な訴えであると同時に、「安全な医療を提供する責務」を果たすための行動でもありました。
日本への示唆:沈黙は美徳か、それともリスクか
ひるがえって、日本はどうでしょうか。 私たちもまた、物価高と賃金の乖離、そして慢性的な人手不足に苦しんでいます。しかし、日本で大規模なストライキが起きることは稀です。 それは「患者さんに迷惑をかけられない」という、日本人特有の強い責任感と美徳によるものです。
しかし、英国の事例が教えてくれるのは、「現場が無理をして沈黙し続けることが、結果として医療崩壊を助長するかもしれない」というリスクです。 ストライキという手段が良いか悪いかは別として、「今の待遇では働き続けられない」「人員配置を見直してほしい」と声を上げ、データで示し、交渉すること。 それは「わがまま」ではなく、プロフェッショナルとして医療水準を維持するための「正当な業務」の一部なのかもしれません。
今後の見通し:対価を求めることは「悪」ではない
英国政府との交渉は難航しましたが、この運動は世界中に「看護師の労働価値」を再考させるきっかけとなりました。 日本でも2024年から「ベースアップ評価料」などで賃上げの動きが始まりましたが、まだまだ十分とは言えません。
「お金のために働いているわけではない」。 その崇高な精神は大切です。ですが、「誇り」と「対価」は両立しなければなりません。 私たちが自分たちの価値を安売りしないこと。それが巡り巡って、将来の患者さんを守る防波堤になるのです。
一次ソース
- NYで看護師スト1万5千人が参加 過去最大規模 トランプ政権の予算削減で交渉難航
- https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000478318.html



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