退職願の「一身上の都合」を翻訳すると、9割は「人間関係」になる。|厚労省データには映らない、私たちの“本当の理由”

30秒サマリー

背景と現在地

日本看護協会や厚労省のデータを見ると、看護師の退職理由は「結婚」「出産・育児」といったライフイベントが上位を占めています。これだけ見れば、病院は平和な職場のように映ります。

ニュースの核心

しかし、民間の転職サイトが実施した匿名アンケートでは、全く異なる景色が広がっています。退職理由の圧倒的1位は「人間関係」。多くの看護師が、本当の理由を「転居」や「家庭の事情」というオブラートに包んで提出していました。

結論

私たちが退職時に「嘘」をつくのは、最後までその職場が「本当のこと」を受け止めてくれない場所だったという、悲しい証明です。

3分サマリー

背景:綺麗な数字に隠された「諦め」

毎年発表される病院看護実態調査。そこで語られる退職理由は、どれも真っ当で、誰のせいでもない「やむを得ない事情」ばかりです。 師長との面談で「夫の転勤が決まって……」と切り出すとき、私たちは心の中で舌を出しているわけではありません。ただ、**「本当のことを言っても無駄だ」**と知っているから、最も波風の立たないカードを切っているだけなのです。 公的データに残るのは、そうやって私たちが演じた「円満退社」の記録だけです。

ポイント:データが暴く“翻訳”の実態

  • 「転居」の裏にある「人間関係」
    • レバウェル看護の調査によれば、退職理由の本音は「人間関係」ですが、職場に伝えた理由は「転居」などが選ばれています。
    • 「先輩が怖くて」と言うよりも、「引っ越し」と言うほうが、受理する側もされる側も傷つかずに済みます。
  • 給与よりも重い「心のコスト」
    • マイナビ転職のデータでは、「給与」や「夜勤の辛さ」を抑えて「人間関係」がトップ。
    • 身体的な疲れは眠れば癒えますが、理不尽な扱いで負った傷は、休日も私たちを蝕(むしば)みます。
  • 患者さんからの「理不尽」も
    • ビズヒッツの調査では、上司・同僚だけでなく「患者や家族からの態度」もランクイン。
    • 守ってくれない組織への失望が、離職の引き金になっています。

今後の見通し:本音なき組織に、改善なし

「一身上の都合」で片付けられた退職の裏に、どれだけのハラスメントや激務が隠されていたとしても、それは組織のデータには残りません。 データに残らない以上、対策も打たれません。そうしてまた、次の新人が同じ理由で、違う「嘘」をついて去っていきます。 「本当の理由」を言える心理的安全性がない限り、この静かな離職の連鎖は止まりません。

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