【中医協】「急性期のベッド」が、また少し狭くなる?|“看護必要度”の壁と、私たちが守りたい日常

30秒サマリー

ニュースの核心

厚生労働省(中医協)にて、次期改定を見据えた「入院医療」の議論が行われました。報告されたのは、厳しい施設基準により「急性期一般入院料1」を届け出る病棟が減少し、地域包括ケア病棟へ転換する流れが加速している事実です。

結論

高度な治療を求める制度と、ケアを必要とする高齢患者の増加。その「ズレ」が、現場の負担として可視化され始めています。

3分サマリー

背景:2024年度改定が残した“爪痕”

2024年度の診療報酬改定は、急性期病棟にとって厳しいものでした。「重症度、医療・看護必要度」の評価項目が見直され、抗生剤の使用や心電図モニター管理だけでは点数が取りにくくなりました。 今回の中医協では、その結果として**「急性期一般入院料1」の届出施設数が減少し、代わりに「地域包括ケア病棟」などへ転換するケースが増えている**現状がデータで示されました。 これは単なる病棟区分の変更ではなく、日本の医療が「なんでも診る急性期」を維持できなくなっていることの証明です。

ポイント:現場で起きている「3つのミスマッチ」

  • 1. 「急性期」の定義と「患者像」の乖離
    • 制度は「手術や高度な処置」を行う場所を急性期と定めています。
    • しかし現場に運ばれてくる救急患者の多くは、誤嚥性肺炎や尿路感染症、脱水といった「内科的処置+生活援助」を必要とする高齢者です。
    • **「手はかかるけれど、看護必要度の点数は低い」**というジレンマが、病棟経営を圧迫しています。
  • 2. 地域包括ケア病棟への転換圧力
    • 看護必要度の基準を満たせなくなった病棟は、地域包括ケア病棟への転換を余儀なくされます。
    • これにより「サブアキュート(在宅患者の急変受け入れ)」の役割が期待されますが、現場の人員配置やスキルセットが追いついていないケースも散見されます。
    • 看板を変えても、働く看護師の負担が軽くなるわけではありません。
  • 3. 在宅復帰率という名の壁
    • 急性期病棟を維持するためには、早期退院(高い在宅復帰率)が必須です。
    • しかし、独居や老老介護の患者が増え、退院調整は難航する一方。
    • 「帰したいけれど帰せない」現実が、ベッドの回転を止め、結果として病院の収益低下を招く悪循環が起きています。

今後の見通し:2026年度改定へ向けて

次期改定の議論では、この「高齢者救急」を急性期病棟でどう評価するかが最大の争点になります。 単純な点数の引き上げは期待しにくい一方で、認知症ケアや身体拘束最小化への取り組みなど、「ケアの質」に対する評価はより細分化されていくでしょう。 私たちは「点数を取るための看護」ではなく、「患者に必要なケアが評価される仕組み」へと、声を上げていく必要があります。

一次ソース

2025年10月29日 中央社会保険医療協議会 総会 第623回議事録

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